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がんによる痛みとは

近年、老年層の増加とともに生活習慣病(成人)によりがんの発症も増えています。早期のがんでは、30%の患者さんに痛みが現れるといわれています。からだに痛みがあると、日常生活においてもからだを動かしたくなくなったり、やる気や意欲も低下し、食欲がなくなったり、夜眠れなかったりします。人々が、がんの痛みから解放され、生活の質を高め、日々の時間を楽に過ごすことが大切です。

抗がん剤の副作用 ~しびれや痛みを抑える~

抗がん剤の副作用としての手や足のしびれや痛みが、日常生活に大きな影響を与えます。そのため抗ガン剤の服用を制限したりすると、からだへの負担も大きくなります。
最近の研究で、抗ガン剤の副作用による手や足のしびれや痛み(末梢神経障害)に鍼灸治療が効果的(科学的根拠)と言われています。

鍼灸治療の特徴

  • 現代医学ではがんに対して、手術や放射線、抗がん剤を行います。東洋医学(鍼灸治療)はその人が本来持っている自然治癒力を高め、うまく働かない機能状態を改善させます。
  • 鍼灸治療では、副作用がほとんどなく、化学療法(抗がん剤や放射線)と併用したり鎮痛剤を同時使用することもできます。

鍼灸治療の目的

・痛み・便秘・倦怠感・むくみ(浮腫)・冷え・長期臥床で生じる筋肉の痛み・放射線・抗がん剤の副作用である吐き気などの軽減を目的に鍼灸治療が行われています。

鍼灸治療の方法

刺激の種類:鍼(はり)、お灸、低周波鍼通電、灸頭鍼、温灸                         刺激の量:①鍼の刺激 ②灸の刺激 ③鍼の刺激+灸の刺激 ④灸頭鍼の刺激 ⑤温熱の刺激
刺激時間:身体の状態により変化する。 *刺激の量=刺激時間 

がん治療に対して鍼灸治療の効果が期待できるもの

  • 抗がん剤による吐き気を抑えたり、痛みや疲労感・倦怠感などが軽減されます。
  • 抗がん剤の副作用による手や足のしびれや痛み(末梢神経障害)などを軽減
    されます。

抗がん剤の副作用による手や足のしびれや痛みは、一般的に抗がん剤の服用をやめたから約1年くらいで軽減してくると言われています。鍼灸治療をすることで手や足のしびれや痛みの軽減を早められる可能性が考えられています。

現在、がん患者に対して鍼灸治療が行われている施設は、自治医科大学附属病院緩和ケア科、国立がんセンター中央病院、東京大学附属病院、埼玉医科大学病院東洋療科などで行われています。
私は、自治医科大学附属病院麻酔科外来で臨床に携わり緩和ケアで鍼灸治療(毎週火曜日外来担当)を行っています。
鍼灸治療は、副作用もなく抗がん剤による手や足のしびれや痛みの軽減、また、抗がん剤による吐き気を軽減させられる治療法です。手や足のしびれや痛み(末梢神経障害)、化学療法の副作用の吐き気で悩んでいる方は是非ご相談してみて下さい。

鍼灸治療の基礎的研究(動物による研究)

動物の神経に鍼刺激すると、神経に栄養を送っている周りの血管の血液が増えたりします。また、動物の筋肉に鍼刺激すると筋肉内の毛細血管(細い血管)が増えるなどの報告がなされています。 鍼灸刺激の作用機序(どうして治っていくのか)として、化学療法(抗がん剤や放射線)などにより神経が障害を起こした神経を鍼刺激すると血液の流が増えたり、壊れた神経や血管の再生力を高めたりすると考えられています。

 

がんの痛み・しびれに対する

鍼灸治療をご希望の方へ

治療院の窓→治療院紹介→お申し込み・お問い合わせください。

 

国際学会が定めた利用指針

  • 痛みがうまくコントロールできていないとき、はり・きゅうは補完医療として薦められる。(1A)
  • 放射線照射による口内乾燥症に対し、はり・きゅうは補完医療として薦め
    られる。(1B)
  • 心身療法は、不安、動揺、慢性の痛みの低減、生活の質を改善するために薦め
    られる。 (1B)
  • サプリメントは、副作用およびほかの医薬品との相互作用について評価することが薦められる。ほかの医薬品との相互作用がありうるものは、化学療法や放射線療法と並行して、あるいは手術の前には用いられるべきではない。(1B)
  • すべてのがん患者に、補完代替医庶の使用について、尋ねるべきである。(1C)
  • 主流な治療の「代替」になるとして宣伝されている治療法は避けるように、患者に
    アドバイスすることが薦められる。(1C)

*カッコ内は推奨度。推奨度は1、2の順で高く、A~Cは効果を示す科学的根拠の質を
 示す。推奨度2以下は省いた。
    1A=強く薦める・質の高い根拠あり
    1B=強く薦める・質の中程度の根拠あり
    1C=強く薦める・質の低い根拠あり
 国際統合がん学会の「がんの統合医療ガイドライン」より

 生活習慣の改善が癌(ガン)を治す

 からだの中では、毎日数千個のガン細胞が「出来ては消え出来ては消え」繰り返えされています。それは、自分の細胞「免疫細胞」が食べてくれているからです。日常のストレスや不規則な生活(食生活)により、からだの機能が低下してくると、消えることなく残ってしまうことがあります。残ってしまったガン細胞は、長い時間(数十年)をかけて大きくなり、検診などで発見されます。 本来消えるべき、ガン細胞が残り大きくなり継続するとからだの機能が低下して、こころとからだに大きな負担になります。ガンに対して、手術・抗ガン剤・放射線治療などを行なっても生活習慣を変えなければ、いったん小さくなったガンが大きくなったり、他の新たなガンが発見されることがあります。手術・抗ガン剤・放射線治療により免疫力が著しく低下しますから他の病気にもなりやすい状態になります。原因になる生活習慣の改善は自分にしかできません。生活習慣を改善することで、ガンや他の病気にならないからだになります。

緩和ケアとは ~緩和ケアの定義~

WHOの緩和ケアの定義には「緩和ケアとは治癒を目的にした治療に反応しなくなった患者に対する積極的で全人的なケアであり、痛みやその他の症状のコントロール、精神的、社会的、霊的な問題のケアを優先する。緩和ケアの目標は患者と家族のQOLを高めることである。」と書かれています。この定義にも示されているように、緩和ケアは専門の施設だけが行うものではなく、いつでも、どこでも、医療者なら誰もが提供することができなくてはなりません。身体的な苦痛は生きる気力を損ない、精神的苦痛(不安や怒り)、社会的苦痛(仕事上の問題や経済上の問題、家庭内の問題)、霊的苦痛(人生の意味への問い、苦しみの意味、死への恐怖)もまた患者の痛み・苦しみの認知に深く影響します。患者の苦痛を身体的にとらえるだけでなく、全人的な痛み(トータル・ペイン)として理解することが緩和ケアの基本となります。

 がんの痛みの原因と種類

がんの痛みを身体的側面からとらえた場合、その痛みがすべてがん病変によるというわけではありません。

・がんが直接原因となった痛み

原因としては最も多く、がん性疼痛の約70%を占める。腫瘍そのものにより、骨、神経、神経叢、内臓、血管、軟部組織が圧迫されたり浸潤されて生じる痛みである。

・がんに関連した痛み

担がん状態による全身衰弱に関係した痛みである。たとえば、便秘、床ずれ、胃拡張、帯状疱疹(ヘルペス)後神経痛などが含まれる。

・がん治療による痛み

がんの治療に起因した痛みである。たとえば、がんの手術後の創の痛みや幻肢痛、化学療法後の末梢神経障害や大腿骨骨頭壊死、放射線療法後の神経叢の線維化による痛みなどがあげられる。

・がんにもがん治療にも関連しない痛み(非がん性疼痛)

がん発症以前から有していた持病や発症後に合併した疾患による痛みである。具体的には、緊張性頭痛、痔核、関節症などがある。

・内臓転移痛  

胸腔や腹腔臓器への腫瘍の浸潤や圧迫などによる痛みである。この痛みは、部位がはっきりしていないことが多く、一般に身体の奥深くの締めつけられるような鈍痛として表現される。

・管腔臓器の閉塞による痛み

胃、腸管、胆管、尿管などの管腔臓器が閉塞すると、平滑筋が収縮するために内臓痛の原因となる。この痛みは、びまん性の、うずくような限局しない痛みで、その内臓を支配する神経と同じ脊髄分節に属する皮膚に痛 みを感じさせる。

・軟部組織浸潤による痛み 

粘膜や、ほかの軟部組織の炎症、壊死、潰瘍形成により生じる痛みである(末梢性機序による)。たとえば、浅在性の腫瘍が大きくなると筋膜や腹膜が急速に伸展され、腫瘍に一致した部位に 腫脹を伴う痛みが起こる。

・血管への浸潤や閉塞による痛み

血管近くのリンパ管炎によって腫瘍が血管に浸潤すると、血管が収縮するため、障害血管領域にびまん性の焼けるような痛みを感じるようになる。

・脳や脊髄への浸潤による痛み

脳にがんが転移すると、早朝に重く日中になると徐々に軽くなるびまん性の頭痛が出現する(中枢性機序による)。これは頭蓋内圧亢進によるもので、ときに嘔気や食事とは無関係な銃発射様の嘔吐がある。

・神経や神経叢への圧迫や浸潤による痛み

神経根や神経に近接した骨が折れたり、増大した腫瘍により圧迫されることで生じる痛み(末梢・中枢性機序による)で、障害された神経の支配領域に発作性にズキンズキンと焼けつくように感じる。

 

がんの種類別にみられた訴え(症状)に対して行った鍼灸治療の実際

 消化器系

・食がん(頚部リンパ節転移)でみられた訴え(症状)として、首-肩の緊張・強い肩こり、喉の圧迫感・違和感、足のむくみ(浮腫)、肩の痛み(夜間起きてしまう)がありました。それらの訴えに対して鍼灸治療を行っています。

 ・胃がんでみられた訴え(症状)として、お尻から足の痛み、足の外側の痛み(しびれ)、嚥下障害、痰が出ずらい、全身疲労感、腕のしびれ、首―肩前面の付け根(烏口突起痛)がありました。それらの訴えに対して鍼灸治療を行っています。

・肝がん(進行性肝細胞)でみられた訴え(症状)として、鼻づまり、呼吸が苦しい、食欲不振、足のむくみ(浮腫)がありました。それらの訴えに対して鍼灸治療を行っています。

・すい臓がんでみられた訴え(症状)として、背中の痛み(左側が多い)、腰の痛み、便秘(骨転移による難治性疼痛)、食欲不振(胃部に不快感)がありました。それらの訴えに対して鍼灸治療を行っています。

・大腸癌・直腸癌・S状結腸癌でみられた訴え(症状)として、お尻から足の外側の痛み、腰の痛み、足の痛みしびれ、吐き気がありました。それらの訴えに対して鍼灸治療を行っています。

婦人科系

・乳がんでみられた訴え(症状)として、首の後ろの痛み、肩こり、腕の痛み、背中から腰の痛み、 食用不振、便秘、吐き気がありました。それらの訴えに対して鍼灸治療を行っています。

・子宮頸がん(転移)でみられた訴え(症状)として、足のむくみ(浮腫)、息苦しさ(心臓の発作)、肩の張り・こり、腰から足の痛み、お尻の痛み、足の付け根のむくみ(リンパ浮腫)がありました。それらの訴えに対して鍼灸治療を行っています。

・卵巣癌でみられた訴え(症状)として、腰から尾骨の痛み、腹部手術跡の痛みがありました。それらの訴えに対して鍼灸治療を行っています。  

腎・泌尿器系

・膀胱腫瘍・尿管腫瘍でみられた訴え(症状)として、全身倦、側腹部の痛み 、足の感覚障害がありました。それらの訴えに対して鍼灸治療を行っています。

・腎臓がん手術後でみられた訴え(症状)として、背中の痛み(痛み増強)、吐き気がありました。それらの訴えに対して鍼灸治療を行っています。

脳神経系

・脳腫瘍手術後でみられた訴え(症状)として、腕の痛み、足の痛みがありました。それらの訴えに対して鍼灸治療を行っています。

 ・聴神経腫瘍でみられた訴え(症状)として、顔面神経麻痺がありました。それらの訴えに対して鍼灸治療を行っています。

術後経過

・乳がん手術後でみられた訴え(症状)として、肩の痛み、腕のむくみ(リンパ浮腫)、手のむくみ、腕から脇の痛み、胸の痛み、手術あとの引きつりがありました。それらの訴えに対して鍼灸治療を行っています。

・卵巣がん手術後でみられた訴え(症状)として、肩の痛み・腰の痛みがありました。それらの訴えに対して鍼灸治療を行っています。

・口腔がん手術後でみられた訴え(症状)として、下あごのしびれがありました。それらの訴えに対して鍼灸治療を行っています。

・食道がん手術後でみられた訴え(症状)として、背中の痛みがありました。それらの訴えに対して鍼灸治療を行っています。

 

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