つわり・妊産婦の腰痛の鍼灸治療
つわり(妊娠悪阻)について
原因
- つわりは、妊娠4週頃からはじまる気持ち悪さ(悪心)、吐き気(嘔吐)、食欲不振、味覚や嗅覚の感受性が高まることによって起こる不快症状です。
- つわりは、妊娠4週頃からはじまり、自覚を感じるのは5~6週頃が多いようですが胎盤が完成する15週頃までに大体落ち着くようです。(妊娠初期から持続。妊娠後期で症状がひどくなることもあるようです)。
- つわりは、妊娠初期から多くの妊婦さんに起こりますが、程度や持続期間は個人差も大きく、妊娠のたびに違うこともあります。
- つわりは、妊娠という特殊な状況がからだの中に生じたためにからだが起こす反応とされ、妊娠性のホルモン(hCGというホルモンや黄体ホルモンの分泌)が活発になり、環境(妊娠に対する不安や心配、気遣い)の変化で精神が不安定になり体に変調をきたします。その変化が急激に起こるため自律神経が乱れてしまい、からだが妊娠の状態に慣れてくると収まります。
つわり(妊娠悪阻)の鍼灸治療について
- つわりの症状は、個々違うので一人一人の症状に合わせた鍼灸治療をおこなって行きます。
- 鍼灸治療によりつわり症状を改善し、予後を良好にすることで楽な生活が可能になります。
つわりの鍼灸治療法とメカニズム
〜鍼灸治療の手順〜
- 鍼灸は、ツボを刺激によりからだとこころの緊張を和らげ、全身状態を整え自律神経の働きを安定させます。
- 鍼灸は痛みを和らげて固くなった筋肉を和らげ、からだと脳をリラックスさせます。
つわり(妊娠悪阻)の症状
- ほとんど症状のない
- 食欲がない
- 吐き気がする
- 吐いてしまう
- なんとなくからだがだるい
- 下痢
- 頭痛
- 空腹時に症状が強くなる
- 眠気が続く
- 唾液がたくさん出る
- においに敏感になる
- 何か特定の食べ物ばかり食べたくなる
- 今まで食べられていたものが嫌いになる
- 何を摂っても吐いてしまう
- 食べている方が気分がよい(たべつわり)
つわり(妊娠悪阻)の生活注意点
つわりの症状は心理的な要因が大きく左右されるため、好物だけでもよいので水分と食事の摂取を心がけ、自分の周りから刺激になる嫌いなものを遠ざけ、ストレスのたまらない生活を心がけましょう。
また、つわりの症状が強い時は、歯みがきなどがおろそかになりがちなので歯の健康にも注意しましょう。
つわりの時期の食生活
- 日中は食事を1日3回と決めつけるのではなく、食べたいものを、食べたいときに、食べられるだけ取りましょう。
- 一度に沢山とらずに小分けにして取りましょう。
- 消化の良いものやさっぱりしたものを取りましょう。
- 水分(できればスポーツドリンクのような電解質を含んだ飲料)だけでも飲むようにしましょう。
- 赤ちゃんはこの時期栄養は沢山いりませんので心配しすぎないこと。
- 朝の起きがけなど胃の中が空っぽになってい時に症状が出やすいですから固形スナックなどを少し食べてから起床するようにしましょう。
妊娠時の腰痛・骨盤痛の鍼灸治療
妊娠中期(5ヶ月~7ヶ月)以降で、妊娠の経過が順調であり妊娠リスク因子(切迫流産・早期産・骨盤早期剥離・妊娠高血圧など)がない場合い適応です。
妊娠中の骨盤痛には・恥骨結合機能不全(恥骨離開)・腰椎と仙椎の痛み(腰痛)・後部骨盤痛(仙腸関節痛)があります。
恥骨結合機能不全(恥骨離開)
恥骨は、線維と軟骨の混合で左右の骨盤をつないでいて、妊娠中~出産に備えて骨盤輪が広がることにより(恥骨結合は平均2~4mm広がり)、関節が緩みます。骨盤が不安定になった場合に恥骨結合機能不全が起こり、一般的に妊娠15週~28週に起きると言われ、痛みは徐々に増して行きます。出産後、痛みがなくなることもありますが産後数ヶ月ぐらい痛みが続く場合もあります。
症状
恥骨結合部に刺すような痛み、鈍痛、ズキズキする痛み、きしむ感じがします。下腹部、足の付け根(そけい部)、太もも、足、腰に痛みが広がります。歩いたり、階段を上り下りした時、椅子から立ち上がる時、股を開いたり、寝返りなどの動作が痛みのため困難になります。
原因
恥骨結合機能障害は、妊娠期間中に以下の要因の組み合わせで起きます。
- 骨盤へかかる負担の変化・ホルモンの変化により帯が弛緩・骨盤と筋肉の弱化による背骨-骨盤の不安定化
日常生活での注意
- 長時間立っていたり、長い時間歩いたり、足を組んだりしないようにする。
- ベッドから起き上がったりする際には足を開かないようにする。
- 寝返りの際も、できるだけ両足を一緒に動かし股を開かないようにする。
- 腰を曲げたりひねったりしないようにする。
腰椎と仙骨の痛み
症状
腰の中心から太ももの後ろにも痛みを感じてきます。長時間立っていたり、腰を曲げた姿勢を続けたり、中腰で物を持ち上げたり、ひねったりすると痛みが強くなります。
原因
腰椎と仙骨の痛みは、いわゆる腰痛と言われ、妊娠経過とともに体重が増加することにより体型が変わり(お腹を突き出し、腰を反り返るような姿勢)、腰が過度に前に湾曲することにより起こります。体重増加することにより椎間板、靭帯、関節面に負担がかかります。
また、お腹が大きくなると腹筋が伸ばされ、腰の筋肉にストレスがかかり鈍痛や重い痛みを感じます。
仙腸関節痛(後部骨盤痛):約20%の妊婦に起こります。
仙腸関節は、体重を支えるための関節で普段、ほとんど関節が動くことはありません。歩いたり、走ったりする時に腰にかかる衝撃を抑えてくれます。
原因
- 出産に備えて骨盤を開かせるために弛緩ホルモンが妊娠中に分泌され、その影響によって仙腸関節の靭帯が緩みます。
- 子宮が大きくなることで、骨盤周囲の筋肉が引き伸ばされ腹筋が弱まることによって起こります。
- 妊娠の経過に伴い体重の増加や歩行時に仙腸関節へかかる負担が大きくなることで不安定なります。
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症状
- 骨盤や仙骨周囲の鈍痛。
- 太ももの付け根や後ろ、お尻が痛む。
- 椅子から立ち上がる時、座ったりする時、階段を上ったりする時、ソファーに座ったり立ったりする時、物を持ち上げたりする時に痛みが強くなります。横になって休んでいると痛みが軽減します。
日常生活での注意
就寝時の姿勢
- 横になり休む時は、枕を肩の高さに合わせて膝を軽く曲げて抱き枕を抱える姿勢で上の足がお腹を圧迫しないようにします。横に寝ることで胎盤への血流を減らすことなく腰への負担を減らします。
- 就寝ベットは、からだ(腰)が沈まない(堅めの物)ものが望ましいです。
- 妊娠20週後は、上向きに寝ることを避け横向き(左右どちらでも)で休むようにします。長時間の上向きは赤ちゃんの重さで腰骨や血管などを圧迫してしまい胎盤や赤ちゃんへの血流を減らします。
立っているときの姿勢
- 膝を軽く曲げて背中を伸ばして、少しお腹を引っ込めるようにすると腰への負担が減ります。
椅子に座る時の姿勢
- 座った時に、膝とお尻が同じ高さになるようにして、真っ直ぐな背もたれのある椅子に座るようにします。
- 背中と椅子の間にクッションなど入れて腰が反り過ぎないようにします。
妊娠中の腰痛にシップ薬(市販薬)は使えるでしょうか?
- 妊娠中に使える商品としては、サロンパスA、アンメルツ、パテックスなどがありますがアレルギーに気をつけて使用します。
- 使用前に注意が必要な商品としては、サロンパスEX、バンテリンハップ、アンメルシンなどがあります。
- 妊娠中に使用できない商品としては、フェイタスシップ、フェイタス3.5g、パテックスフェルビナスターなどがあります。
なぜ?妊娠中にシップ薬(市販薬)は使えないのでしょうか。
- 強い消炎鎮痛剤は、皮膚から吸収が高く炎症が広がらないように血管を収縮させる働きがあり、炎症物質がからだのなかで滞るからですです。
- お腹の中の赤ちゃんは、呼吸や消化の働きに重要な特殊な血管がありインドメタシンやボルタレンは、強い血管収縮作用があるので赤ちゃんの成長に影響があるからです。
*妊娠中に使えない消炎鎮痛剤でも、産後にはすべての商品が使えます。
*各商品の「使用に際しての注意」書きからの抜粋(一部)です。
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